目の病気

眼球打撲の症状・原因・対処法について

野球やサッカー、ゴルフなどの球技をしていると、ボールが目の周りに当たって怪我をする事故は少なくありません。また、ボールだけでなく、バットやクラブなどで強打されたり、他のプレイヤーとの接触で目を打撲することもあるでしょう。子ども同士の喧嘩などでも、運が悪く目の辺りに拳が当たったりすると、眼球を損傷してしまうことがあります。

このような怪我で眼球に衝撃がかかることを「眼球打撲」といいます。重症になると、失明する可能性もあります。今回は、眼球打撲の詳しい症状、原因、それに伴って生じる可能性のある疾患、さらに眼球打撲の対処法について、順に見ていきましょう。

眼球打撲とは

眼球打撲とは、眼球に急激に大きな力を受けることで、眼球やその周りにある組織・血管・筋肉などが損傷することです。野球やサッカー、ゴルフをする人に多く見られますが、ラグビーなどの接触の多いスポーツでも起こりやすい怪我です。

眼球を強く打撲すると、眼球内の出血による緑内障や網膜剥離、眼窩底骨折、白内障などを引き起こす可能性があり、放置しておくと失明する恐れがあります。

眼球打撲の症状

眼球打撲の主な症状としては、次のようなものが挙げられます。

出血

目の周りを走る血管は細く、出血しやすい血管です。出血すると、ほとんどは自然に吸収されますが、出血量が多かったり、切れた血管の場所によっては、眼圧上昇を招くことがあります。また、外から見て出血していることが分かる場合、出血量を増やさないために、うつ伏せ姿勢を避けて安静にしておきましょう。就寝時は枕を高めにすると良いでしょう。

まぶたの腫れ・裂傷(眼瞼裂傷)

打撲によってまぶたが腫れ上がり、物が二重に見えるなど視野を妨げてしまうことがあります。

また、眼球自体には傷がなく、まぶたに裂傷が出来た状態を「眼瞼裂傷」といいます。衝撃の程度によっては、涙の通り道を塞いでしまうこともあり、このような場合には、塞がった部分を開通させるような手術が必要になります。

目のかすみ・複視・視力低下

打撲の直後は、目がかすんだり、物が二重に見える「複視」や、視界を蚊のような小さな虫が飛んでいるように見える「飛蚊症」という症状が見られることもあります。

また、これら症状に伴って、視力が低下することもあります。

頭痛・眼痛・吐き気

眼球付近で出血が起こると眼圧が上昇し、これによって強い眼痛や頭痛、吐き気といった症状が起きることがあります。

眼球打撲は、見た目に分かりやすい症状が少ないため、あまり重大な怪我だと考えずに放置してしまう人が多いかもしれません。しかし、失明などに繋がることもあるので、目の周りに強い衝撃を受けたら、早めに眼科等を受診しましょう。

眼球打撲の原因

眼球打撲の原因として多いのは、野球やサッカー、テニスなどの球技を行っている時に、ボールが飛んできて目の周りに当たるというケースです。他にも、ゴルフやバトミトンなど、硬くて小さい球を飛ばすようなスポーツをする際も、眼球打撲が生じる可能性があります。また、単に「転んで目をぶつける」といったケースもあります。

また、野球やテニスには軟球と硬球の2つがありますが、実は眼球打撲を起こしやすいのは、軟球のほうです。硬球は硬さが十分にあるため、眼球を収めているくぼみを作っている骨(このくぼみを「眼窩」といいます)が折れて眼球まで衝撃が伝わらないことが多く、眼球を傷つける可能性は低くなります。対して、軟球の場合、柔らかいため、骨は折れずに眼球の中まで衝撃が伝わって、眼球を押しつぶしてしまいます。つまり、硬いものよりも柔らかくて、小さいものが当たった時の方が、眼球打撲の可能性が大きくなります。

眼球打撲によって生じる疾患

眼球打撲は「眼球がなんらかの衝撃を受ける」という怪我ですが、それに伴って生じる可能性のある疾患がいくつかあります。

角膜びらん

眼球の表面にある透明な膜を「角膜」といい、この膜は視力に大きく関わっています。

「びらん」とは膜状のものが一部または全部、はがれることを指します。これは眼球への強い衝撃によって、角膜が傷ついて起きるものです。

角膜は非常に鋭敏に反応する部位であるため、傷つくと非常に痛みを伴い、涙が大量に出てしまい、目を開けていられなくなることもあります。症状が大きいため、失明などのへの不安を持つ人もいるかもしれませんが、適切な治療を施せば、数日でほとんどの症状は軽快することが多いようです。

結膜裂傷

白目の表面を覆っている膜を「結膜」といい、これが裂けることを「結膜裂傷」といいます。出血すると白目が赤くなるため、見た目に分かりやすい症状です。出血はほとんどの場合、自然に吸収されていきます。

水晶体脱臼

水晶体脱臼とは、レンズの役割をする水晶体が本来あるべき位置からはずれた状態を指します。これは、水晶体を支えている「チン小帯」という筋肉が、打撲などの衝撃で一部、切断されてしまうことで起きます。

水晶体脱臼が起こると、水晶体は眼球の内部の硝子体や白目を覆う膜である「結膜」の下にずれ込みます。これによって緑内障や虹彩毛様体炎といった症状を併発することがあります。水晶体が硝子体の中に完全に入り込んでしまった場合などは、手術を行い水晶体を摘出します。

眼窩底骨折

眼窩底骨折とは、眼球を収めている窪み「眼窩」を作っている骨が骨折することを指します。眼窩を構成する骨のうち、底面にあたる部分の骨が非常に薄く、骨折しやすいため、眼窩「底」骨折と言われます。
眼窩底骨折が起きると、単に骨が折れるだけでなく、眼球の位置がずれたり、眼球を覆う脂肪や視神経(視覚情報を脳に伝える神経)が骨折した隙間から眼窩の外にはみ出してしまうことがあります。これによって、複視(物が二重に見える事)などの視覚障害や眼球の運動に障害が出たりする可能性があります。このような場合には、手術などで治療する必要があります。

前房出血

前房とは、角膜と虹彩(瞳の周りを形成する膜で瞳孔の大きさを調整する役割を担う)の間のことを指します。前房には液体が循環しており、これを「房水中」と言います。外からの強い衝撃によって眼球付近の毛細血管が切れて出血すると、房水中に血液が溜まることがあります。これは視力の低下を招き、重症の場合、眼圧(眼球にかかる圧力。房水中の量で調節されている)が上昇し、吐き気を催すことがあります。ほとんどの場合、出血は数日で自然に吸収されて収まりますが、一度傷ついた部分は再出血の危険性があるため、怪我をして1週間程度は、球技など目に何かが当たる可能性のあるスポーツをするのは控えるようにしましょう。

再出血すると、血の吸収が遅くなり、漏れ出た血液が角膜を染めてしまい、視力に障害が出ることになります。このような場合は、前房を洗うような処置が必要です。

網膜裂孔・網膜剥離

強い打撲を受けると眼球が歪み、眼底(眼球内部の後面のこと)の出血や網膜が裂けて穴ができたりすることがあります。これが網膜裂孔です。さらに、網膜が剥がれることもあり、これを網膜剥離といいます。網膜は眼球内部の膜で、視覚に直接関わる重要な部位であり、その中でも特に重要な「黄斑」という部分にまで裂孔や剥離が広がると、視覚障害が生じ、失明する可能性があります。
網膜の剥がれは痛みを伴わないため、自覚しにくい症状ですが、網膜剥離の前兆として飛蚊症になることがあります。

隅角解離

隅角解離とは、眼球を前面から押される外力が加わって、虹彩と水晶体が眼球の後方へ無理やり押し下げられることで、虹彩の根元が角膜との間で裂ける事によって起きる状態です。
放置しておくと、眼圧が上がって視野が障害されたり、不正乱視が出て見えにくくなったり(これを「低眼圧黄斑症」と言います)することがあります。

眼球打撲によって隅角解離が起きた場合は、数ヶ月間、定期底に眼圧を測定して、経過を観察する必要があります。

虹彩毛様体炎

虹彩毛様体炎とは、虹彩および毛様体が炎症を起こすことで、腫れ上がったり充血したりする疾患です。眼球打撲による虹彩毛様体炎は、衝撃によって出来た傷に細菌などが感染することで生じます。
炎症の部位が虹彩と毛様体のみである場合は、炎症を抑えるために、副腎皮質ステロイドの点眼薬を数日~数週間続けて使います。炎症が強い場合には、結膜に直接ステロイドを注射したり、ステロイド薬の内服を行ったりします。また、虹彩と水晶体の癒着を防ぐための点眼薬も同時に処方されることがほとんどです。

虹彩毛様体炎自体は、見た目に分かる症状がありませんが、放置しておくと、虹彩と水晶体の癒着から、緑内障の原因になることもあるため、打撲を受けたら、すぐに眼科を受診して詳しい検査を受けるようにしましょう。

外傷性緑内障

外傷性緑内障とは、出血や腫れなどがおさまっており、外見上全く異常が認められないにも関わらず、眼圧が高くなるような症状です。これは、目の中を循環する液体(房水)の出口が妨げられることで、上手く循環出来なくなることで起こります。

放置しておくと、視力の低下や視野の欠損を起こし、ゆくゆくは失明する可能性もあります。打撲を受けてから1ヶ月間は、定期的に眼圧測定や眼底検査などの検査をして経過を観察し、眼圧がずっと高い状態であれば、緑内障になっている可能性があります。薬による治療や場合によっては手術が必要になることもあります。

網膜振盪

網膜振盪とは、眼球内面の網膜が腫れて起こります。網膜の中でも特に「黄斑」と呼ばれる、視覚に深く関わっている部分が腫れると、視力が一時的に低下してしまいます。ほとんどの場合は、1~2週間で回復しますが、まれに、眼球内部からの出血や網膜剥離を併発することがあります。一定期間が経過しても視力が元に戻らない場合は、眼科専門医の診察を受けるようにしましょう。また、経過観察中は運動などは控えるようにしましょう。

眼球を打撲した時の対処法

眼球を打撲した時は、まずはむやみに触らないことが大切です。ぶつけた段階では、眼窩底骨折や視束管骨折などの重篤な状態があるかどうか、見た目には分からないため、怪我した部位には触れずに安静にしましょう。アイスノンなどで冷やしたりすることも避けてください。

清潔なガーゼや圧迫の少ない眼帯があれば、それを怪我した部位に優しく当てて、出来るだけすぐに医療機関へかかるようにしましょう。

まとめ

眼球打撲は、学童期の子どもには特に多い怪我ですが、見た目に分かりやすい外傷ではないため、見逃されがちです。特に小さい子どもは上手く自分の状況を説明できないため、打撲したことも周りの大人に伝えられなかったりします。しかし、放置しておくと失明しかねない重篤な症状が隠れている可能性があります。柔らかいものであっても、ある程度強い力で物が目の周りに当たった場合や、打撲した後に見え方に違和感がある・強い痛みを感じるといった場合は、むやみに触らずに早めに対処するようにしましょう。