目の病気

アトピー性皮膚炎の目への影響について

アトピーというと、全身の皮膚に湿疹ができ、痒みや痛みを伴う症状であることは知られていますよね。”アトピー性皮膚炎”という名前からもわかるように、皮膚が炎症状態になり、良くなったり再発したりを繰り返す辛い病気です。

このアトピー性皮膚炎が、「目」へと影響することもあります。「皮膚炎」というくらいですから、一見、目には関係がないように思えますよね。しかし実は、「アトピー性皮膚炎」と「目」には充分な関連性があったのです。

今回は、アトピー性皮膚炎で目にどんな影響があるのかサーチした結果をご紹介します。併発すると恐ろしい目の病気と、アトピー患者には馴染み深い「ステロイド」についての見解もまとめています。

アトピー性皮膚炎とは?

まず、アトピー性皮膚炎について知っていきましょう。

もともとアレルギーを起こしやすい体質の人や皮膚の防御機能が弱い人に見られる病気で、皮膚の炎症を伴い、湿疹やかゆみが生じます。

一時(いっとき)で治るものでなく、慢性的に続くのが特徴です。一度「良くなった」と思っても、再発を繰り返します。一般的に6ヶ月以上、乳幼児は2ヶ月以上この状態が続くようであれば、アトピー性皮膚炎と診断されます。

アトピー性皮膚炎の根本的な原因は、はっきりと判っていません。後にもご紹介しますが、その要因としてダニやホコリなどのアレルゲン、または汗や乾燥、もしくはストレスなどの心因的要因や、過労などが挙げられます。

そうした原因となるものが絶妙なバランスで重なり、その人にとってアトピーの原因となるに十分なものとなったとき、皮膚の炎症としてあらわれてきます。それは、目、「眼球」にさえかゆみを起こすことがあります。

アトピー性皮膚炎を定義する事柄の一つに、「アトピー素因をもつこと」があります。このアトピー素因とは、

  • 本人または家族が、アレルギー性の病気(アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、ぜんそく、結膜炎など)を持っていること
  • アレルギーと深い関係がある免疫物質「IgE抗体」を作りやすい体質を持っていること

をいいます。簡単に言い換えれば、アトピー素因とは「アレルギーを起こしやすい体質」であるといえるでしょう。つまり、こうした体質的な要因に、外からの影響(ダニやストレスなど)が重なることによって発症するのです。

もともと肌のバリア機能が弱いため、角層(肌の表面)のバランスが崩れています。肌が健康な状態であれば撃退できるはずの外からの刺激や雑菌も、この角層のスキマから入り込み、さらには自身の水分や皮脂も抜けていくため、乾燥しがちです。

そうして入り込んだ雑菌やアレルゲンは撃退しなくてはならないため、免疫細胞が働き、ヒスタミンという物質を出し炎症を起こします。
そうするとかゆみが生じるため、人は肌をかいてしまいます。かくことで更に肌の角層が破壊され、バリア機能を失い、またアレルゲンにやられてしまう…という悪循環が生じてしまうのです。

アトピー性皮膚炎で併発する恐れのある目の疾患

では、このアトピー性皮膚炎が、目にどんな悪影響を及ぼすのでしょうか。

もともとアトピー性皮膚炎で生じる湿疹の多くは、肘やひざの内側、首や顔(目の周りを含む)などにみられるようです。しかし酷くなると全身どこにでもあらわれ、眼球さえもかゆみに襲われることがあります。

それでは、アトピー性皮膚炎から併発してしまう恐れのある「目の病気」についてみていきましょう。

眼瞼炎

主に睫毛の生えぎわ(目のフチ)のあたりを指しますが、広くはまぶた全体に症状が現れます。かゆみ、ただれ、かさつきなど。

「ものもらい」などは”感染性眼瞼炎”といいますが、アトピーの場合はアレルギー性眼瞼炎といいます。しかし、かゆみを伴うことでよくまぶたを”かいて”しまうので、そのことによってまぶたの傷口から細菌が入ってしまう恐れもあります。

角結膜炎

アレルギー性結膜炎は、なんらかのアレルゲンが目の表面に付着しアレルギー症状を起こすもので、花粉症もその一つです。アトピーの場合はアトピー性角結膜炎といい、症状はアレルギー性角結膜炎とほぼ同じです。

かゆみがひどく、涙が流れます。結膜が厚くなったり、充血したり、濁ったりすることもあります。また、まぶたの皮膚自体が厚くなったり感染を起こしたりするため、「角膜上皮障害」を伴うこともあります。これは、まばたきや涙による自然な角膜の保護作用が低下してしまうためです。

アトピー性角結膜炎の患者の多くは、”ダニ”に非常に弱いという特徴が見られます。

円錐角膜

本来、目は球状であるため、角膜(目の表面)もなだらかなドーム状になっているべきです。しかしかゆみによって目をこすりすぎることで、角膜が円錐状に尖ってしまうことがあります。これを円錐角膜といいます。

円錐角膜

その結果、角膜が薄くなり中心だけが突出するため、乱視になったり視力が低下したりします。日本人の発症率は、1000~2000人に一人といわれています。

角膜潰瘍

角膜の組織が、目の表面から欠けていく症状です。角膜の表面がめくれてしまう「角膜びらん」とは異なり、角膜内部(実質)も薄くなったり濁ったりしてきます。

角膜の病気としては”重症”に位置し、異物感、充血、痛み、目やにが酷い、などの症状がありますが、これらの症状が治まったとしても視力低下が残ることもあります。また、角膜に孔が空くほど深い潰瘍ができれば、失明の恐れもあります。

巨大乳頭結膜炎

これは、アレルギー性結膜炎が悪化した結果の病状です。結膜(上まぶたの裏)にブツブツができ、非常なかゆみを伴います。めやにや涙が止まらないことも特徴です。

これがさらに悪化すれば、上記に挙げた角膜潰瘍を起こすこともあります。

白内障

目のレンズに当たる水晶体が白く濁り、モノがよく見えなくなってくる病気です。実際のところ、アトピー性皮膚炎とこの白内障の関連性はハッキリしていません。しかし、皮膚炎にかかっている期間が長ければ長いほど、または顔の皮膚炎症が重いほど、白内障を発症する確率が高くなっています。

アトピーによって目がかゆいために目を強くこすったり、叩いたりする物理的な刺激が、白内障を併発する原因ではないかとも言われています。白内障を片目だけ患った場合、日常生活の中では気づかずに進行していくことが多くあります。アトピーの症状が顔面に特に酷いと感じる方が視力に違和感を感じたときは、眼の検査を受けるようにしましょう。

網膜剥離

網膜は、目の表面から入ってきた光の情報を投影する、いわば目のフィルムのことです。

網膜

この網膜(視細胞)が、土台である網膜色素上皮細胞から剥がれていってしまう病気、それが網膜剥離です。

少しずつ剥がれていくと、剥がれた部分には栄養が届かなくなってしまうため細胞組織が死んでしまいます。剥がれた部分には光の情報が映らないため、見た風景の一部が欠けることになります。アトピー網膜剥離の約70%は15~25歳に多く、特に10代によくみられます。そしてその40%が、両眼に剥離が起こります。思春期を過ぎても顔の皮膚炎がよくならない人に多くみられ、視力障害を予防するためにはとにかく早期発見が大切です。

網膜の中心が剥がれた場合は一気に視力が悪くなるため、気づくのも早いでしょう。しかしアトピー性網膜剥離の場合、網膜の外側から少しずつ、ゆっくりと剥がれるため、長い間放置されることが多くあります。本人に自覚症状が無いためです。

ステロイド配合薬で失明の可能性も

アトピーの治療薬の一つに、ステロイド入りの軟膏が処方されることがありますね。炎症と痒みを鎮め、皮膚の乾燥を防ぐものです。

ステロイドの使用については、賛否見解が分かれます。

『アトピー性皮膚炎の治療において、これほどまでに頼れる成分はない!』

という医師がいる傍ら、

『ステロイドの危険な副作用について、医療関係者は公にしていない』

と述べる人もいます。

ステロイドについて否定的見解を持つ人は、その副作用のうち最も恐ろしいものの一つとして目の障害を挙げています。

長い間多量のステロイドを使い続けることによって眼圧が高くなり、日常生活の中で突然視界に変化が起こるというのです。霞がかかったりぼやけて見えたりします。

水晶体が濁っているので、眼科では「白内障」と診断されます。アレルギー反応や炎症を鎮めるため、さらにステロイド点眼薬や飲み薬を処方されます。そのため、ステロイドの副作用による目の病気が更に進むといった見解です。

しかし、ステロイド治療を行うかどうかは結局のところ、本人の意思によります。主治医の処方するステロイド配合薬を使用し続けるかどうかは、よく話し合って納得した上で使用することが大切です。

ステロイドのランクは5段階あります。医師は、患者の炎症の酷さや使用する場所などを考慮し、適切な強度と用量を指示して処方します。また、非ステロイドという選択肢もあります。こうした点も頭に入れながら、不安があるときは病院で相談してみましょう。

自分の発病因子を特定することが大事

アトピー自体の根本的原因についてはまだ、はっきりと特定されていません。皮膚が乾燥しバリア機能が低下した状態に、ダニ・ほこり・食べ物などのアレルゲン、またストレスなどのさまざまな環境的要因が関与し、そうしたものが重なることによって起こるとされています。

もしそうした多様な要因の中で、自分にとって一番の原因であろうと思えるものがあるのであれば、徹底的に排除していくことが大切ですね。

先の「アトピー性角結膜炎」の項目でも述べたように、その患者のほとんどはダニ過敏症です。布団だけでなく、衣替えで出した衣類や座布団、帽子なども、布製のものはよく叩き、天日干しして殺菌しましょう。

そのほか、カビ、花粉、動物の毛やフケなどもアレルゲンとして挙げられます。要因がアレルギー以外の場合、自身の汗や衣類の摩擦といった刺激、極度な乾燥、引っかき傷、洗剤や合わない化粧品などの日用品が起因している場合もあります。

たとえ長年使用してきたメーカーの化粧品でも、ある日から突然体質が変わり”かぶれる”ようになったという話は珍しくありません。

さらに、寝不足やストレス、過労なども要因として挙げることができます。現在の仕事や生活環境における重いストレスが、皮膚の炎症となって現れることで心のSOSを表現している場合があります。

アレルゲンが原因でなければ、そうした要因を徹底的に排除することで、嘘のように症状が改善します。

アトピー性皮膚炎の治療において大切なことは3つのポイントに分けることが出来ます。その一つが、前述したようなアレルゲンや原因となる環境の徹底排除・改善です。
もうひとつは「薬物治療」、最後に「スキンケア」です。

薬物治療において主に使用されるのは、過剰な免疫反応をおさえ炎症を鎮める作用のある「ステロイド薬」や「非ステロイド性抗炎症薬」、「免疫抑制薬(タクロリムス外用剤)」などです。

初めは今の肌の状態をよくするため一日数回使用する、そして症状が沈静化してきたら徐々に使用量を減らすことで、自身の治癒力や保湿力でやっていけるように調整していくのが一般的です。

なにより、「掻きむしり」という行為を抑えることが第一のステップですから、かゆみを抑えていくことが初めの目標となります。小さなお子さんにはかゆみを我慢するということは非常に大変なことかもしれませんが、掻きむしることで起こる悪循環を止めることが、治癒への第一歩です。

スキンケアという点においては、「清潔」と「保湿」が大切なポイントです。皮膚炎であることが、決して「汚い」わけではありません。

ヒトの皮膚には、もともと常在菌というさまざまな菌が存在します。この常在菌がバランスよく存在する環境を保つ、「弱酸性の肌」が健康な肌です。
一方、アトピー性皮膚炎の皮膚はやや「アルカリ性」に傾きやすくなっています。常在菌のバランスが崩れているため、抵抗力や殺菌力が弱まって「黄色ブドウ球菌」が健康な皮膚に比べ多くなってます。この「黄色ブドウ球菌」が出す毒素が、アトピー性皮膚炎を悪化させることがわかっています。

ですから、流れるような汗をかいていなかったとしてもキチンと入浴すること、またそのあとには保湿をしっかりと行うことが大切です。

まとめ

アトピー性皮膚炎に悩む人は、皮膚のかゆみに注意が集中し、”目”への影響まで気が回らないこともあるかもしれません。しかしこの記事でご紹介したように、アトピーが原因となる目の病気はたくさんあります。そして目の疾患は、一度発症してしまうと取り返しのつかないものも多くあります。

一度落ちた視力が元に戻ることはなかなか難しいものです。

特に、顔の肌に炎症がよく起きるという方は、定期的な眼科の検診を心がけましょう。また、少しでも視界や眼球、まぶたなどに違和感を覚えたら、通院している皮膚科の医師にでも良いので、すぐに相談してください。