目の病気

緑内障の最新治療『チューブシャント手術』とは?

緑内障は、日本国内に400万人の患者がいるとされており、眼科ではよくみられる一般的な病気です。

緑内障の治療は原則として目薬で行いますが、効果が不十分な場合にはレーザーによる治療や手術が行われることもあります。手術に関しては、近年「チューブシャント手術」とよばれる方法が保険適用となりました。この手術は海外では比較的長い歴史があるのですが、日本ではまだあまり行われていません。

今回はそんなチューブシャント手術についてわかりやすく説明し、発生しうる合併症などについても解説します。ぜひ参考にしてください。

緑内障ってどんな病気?

チューブシャント手術の説明の前に、緑内障について解説します。

緑内障とは、眼球内部の圧力(眼圧)が上がることによって視神経にダメージが生じる病気です。

眼圧は、眼球内部の水分などによってコントロールされています。この水分によって眼球はきれいなボール状の形を保っているのですが、緑内障になると水分の循環がうまくいかなくなってしまいます。

その結果、眼球内部にかかる圧力が異常に強くなってしまい、視神経にダメージが生じるのです。視神経にダメージが生じると視野が徐々に欠けてきて、放置すれば失明することになります。

もっとも、緑内障になっても通常は痛みなどの自覚症状はありません。また、初期は視野がわずかに欠けるだけなので、自分で気づくことは難しいです。そのため、気がついた時にはだいぶ症状が進んでいた、といったケースも少なくありません。

ちなみに、眼圧の正常値は21mmHg未満とされています。

しかし、眼圧が正常であっても緑内障を発症する場合があります。これは「正常眼圧緑内障」とよばれています。

正常眼圧緑内障は、日本人で一番多いタイプの緑内障です。緑内障は、眼圧を下げることで進行をおさえることができます。眼圧を下げても失われた視野は回復しませんが、進行をおさえることで現在の視野を維持することはできます。治療は目薬を使うことが多いですが、効果が十分でない場合には、レーザー治療や手術で眼球内の水分がきちんと流れ出るようにすることもあります。

チューブシャント手術とは?

では、最新の緑内障の手術方法として話題のチューブシャント手術について説明します。

チューブシャント手術は、眼球内にごく小さな器具を挿入する手術です。「チューブ」は管、「シャント」は側路・分流という意味なのですが、小さな器具(管)を眼球内に挿入して眼球内部の水分の排出路をつくり、眼圧をコントロールすることを目的として行われる手術です。眼球内の水分は、毛様体で作られシュレム管から排出されます。しかし隅角がせまくなったりシュレム管から水分がうまく排出されなくなったりすると、眼圧が上がってしまいます。

そこで、白目の部分から眼内にごく小さな器具を挿入し、水分の排出路をつくるのです。

手術に使う小さな器具は大きく分けて2種類あります。一つはプレート付きチューブです。プレートを白目の下に入れ、眼球の中にチューブを設置して、排出された水分をプレートから流します。もう一つは、プレートの付いていないチューブのみのものです。これは小さなステンレス製の管で眼内と白目の下をつなげ、水分を排出させます。

チューブシャント手術時の注意点

チューブシャント手術は海外では比較的長い歴史がありますが、日本でこの手術が行われるようになったのはつい最近のことです。

また、チューブシャント手術ができるケースは限られており、リスクもゼロではありません。そこで、以下にチューブシャント手術を受ける際の注意点をいくつかあげました。

その1「合併症」

手術にともない、合併症が生じる可能性があります。合併症は絶対にあらわれるものではありませんが、気になる症状がある場合には医師に相談する必要があります。

視力低下

まず、視力低下です。白内障(目の水晶体がにごる病気)があらわれたり、もともとある白内障が進行したりすることもあります。また、網膜の中心がはれて視力が低下することもあります。特に異常がないのにかすみ目を訴える人もいます。

前房出血

手術後に前房(図を参照)に出血が生じることがあります。これは数日で吸収されることが多いです。

浅前房、前房消失

前房の部分が浅くなったり、まったくなくなってしまったりすることもあります。これは、前房部分の水分の流出と流入のバランスが一時的に崩れるために生じます。

後述の脈絡膜剥離も、原因の一つといわれています。通常は1週間程度で正常に戻りますが、回復までに数週間かかるケースもあります。

脈絡膜剥離

手術後は眼圧が低くなるのですが、眼圧が低くなると脈絡膜(網膜のまわりにある膜、図の濃いオレンジ色の部分)の血管から液体がもれて、脈絡膜がはれてふくらむことがあります。この状態を「脈絡膜剥離」といいます。

眼球の奥から眼の組織を圧迫することになるので、浅前房や前房消失の原因になります。特に治療を行わなくてもふくらみは吸収されますが、治るまでに2~3週間ほどかかることが多いです。

感染症

手術部位に感染症が生じる可能性もあります。

また手術後、濾過胞(手術後、白目にできるふくらみ。留置したチューブから流れる水分によって作られる。たまった水分はまわりの組織から吸収される。)が感染を起こすこともあります。

濾過胞形成不全

手術後のキズの治りが良いと、手術ではがした組織が早めに癒着します。すると、濾過胞がうまく作られないことがあります。濾過胞がうまく作られないと眼内の水分が上手に排出されず、眼圧が下がりにくくなります。

このような場合は、レーザーを使って糸を早めに切ったり、癒着をはがす手術を行ったりすることがあります。

その2「視野や視力が回復するわけではない」

チューブシャント手術は、あくまで眼圧を下げるための手術です。緑内障の進行をおさえることはできますが、すでに失われた視野や視力が回復することはありません。

そのことを知った上で手術を受けなければ、手術後にショックを受ける可能性があります。

とはいえ、緑内障は放置すれば失明につながる病気です。「視野や視力が回復しない=手術を受ける意味がない」と考えず、医師から手術をすすめられた場合には前向きに検討することが大切です。

その3「再手術が必要になるケースもある」

手術を行っても十分に眼圧が下がらないこともありますし、手術によりいったん眼圧が下がっても、再び眼圧が高くなるケースもあります。目薬を使えば眼圧がコントロールできる場合が多いといわれていますが、症状によっては再手術が必要となる場合もあります。

まとめ

チューブシャント手術は日本ではまだ歴史が浅く、手術の対象となる患者さんも限られています。

一方で、従来の方法で手術を行うことができない人や、十分な効果が期待できない人、あるいは重篤な合併症が予想される人に対しても行うことができる手術であり、緑内障治療の選択肢が大きく広がったといえます。

手術を希望する際には納得するまで主治医としっかり話し合い、必要ならばセカンドオピニオンを受けるようにしましょう。また、手術後は定期的に受診し、ちょっとした眼の変化も見逃さないようにしましょう。